自衛隊は２月１９日まで

タイで行われた東南アジア最大級の多国間軍事演習「コブラ・ゴールド」に

約３００人の隊員を参加させ、
 

危険な地域に取り残された日本人を、

安全な場所まで輸送する手順などを確認した。 

　在外邦人の輸送手段として、海上自衛隊の護衛艦「まつゆき」や航空自衛隊のＣ１３０輸送機などに加え、陸上自衛隊の高機動車１両も現地に持ち込んだ。
 

 

政府は平成２５年１月に邦人１０人が犠牲となったアルジェリア人質事件をきっかけに、自衛隊法を改正。航空機と船舶に限定されていた在外邦人の輸送手段に「車両」が追加されたことが背景にあった。 

　訓練では日本人学校の中学生ら約８０人が退避役を務め、

手荷物検査を受けた後、Ｃ１３０輸送機で飛び立った。 

　訓練に参加した高機動車は“疾風（はやて）”の愛称を持つ人員輸送車。

トヨタ自動車が生産を担当しており、陸自の普通科部隊を中心に広く配備されている。

乗員は１０人で、最高速度は時速１２５キロ。邦人輸送や災害派遣時などで主力の輸送手段として位置づけられている。

価格は１両あたり約７００万円とされる。 

　コブラ・ゴールドに参加した高機動車だが、陸自には、より邦人輸送に適した車両がある。“ブッシュマスター”の通称で知られる「輸送防護車」だ。昨年３月、中央即応連隊（宇都宮市）に４両が配備されている。 
　車両の底部がＶ字構造に設計されており、即席爆破装置（ＩＥＤ）や地雷の爆風を左右に逃すように設計されているのが特徴。乗員は高機動車と同じ１０人だが、装甲の強度は格段に高く、小火器による銃撃などにも耐えられる構造になっている。 

　ただ、実際に邦人輸送任務で主力となるのは、当面は高機動車となりそうだ。その理由は、車体のサイズにある。 
　ブッシュマスターは、全長７・１メートル、高さ２・６メートル、幅２・４メートルで、自衛隊の車両の中で最大級の大きさを誇る。Ｃ１３０やＣ１といった現行の輸送機で海外に運ぶ場合、解体しなければ機内に収まらず、現地に到着後、もう一度組み立てる必要がある。緊急を要するミッションでは、解体や組み立てにかかる時間が致命的なロスにつながりかねない。 

　一方、高機動車は、全長４・９メートル、高さ２・３メートル、幅２・２メートルと小ぶりだ。解体せずにＣ１やＣ１３０に搭載、輸送することができる。陸自幹部は「防御力に優れたブッシュマスターを使いたいのは山々だが、邦人輸送は緊急性を要するケースが想定される。当面は高機動車を投入して対応することになるだろう」と指摘する。 

　ただ、この問題は間もなく解消される見通しだ。空自は２８年度中に新型輸送機「Ｃ２」を配備する。Ｃ１よりも機体の全長が１０メートル以上長く、貨物スペースも広い。ブッシュマスターをそのまま搭載でき、迅速な輸送・展開が可能となる。陸自幹部は「Ｃ２が配備されれば、状況に応じてブッシュマスターと高機動車を選択できるようになる」と期待を寄せる。