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会社の借金が、社員の借金ではないように、国の借金は国民の負債ではありません。財務省行政執行の結果責任を、あいまいにぼかす目的が見える。

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会社の借金が
社員の借金ではないように
国の借金は国民の
負債ではありません。

財務省行政執行の結果責任を、あいまいにぼかす目的が見える。

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中央省庁の資産と負債を示すバランス・シートを、
「国(=国家)」のバランス・シートと、

無反省に混同している理由の、根にあるものでしょう。

聞きただせば、財務省も、中央政府のバランス・シートと答えるかもしれない。
では、なぜ「国のバランス・シート」としたのか。


こうした考えが基礎になって、
・中央省庁の財政の破産、つまり国債のデフォルト(支払い不能)が、国家の破産とされ、
・暗黙に「国が破産する=国民や企業が破産する」ような、イメージを与えています。

財務省が、ことあるごとに「国民1人当たりの国債(約700万円)の数字」を持ち出すのは、変なことです。

国債は、国民の負債ではありません。

国債は中央省庁が、行政の執行のために借りてきた負債です。

借りているのは、中央省庁です。

政府の財政の管理は、財務省が行っています。政府に属する経理部が、利付き借用証として、
国民である金融機関と世帯に売ったものが国債です。

会社の借金が、社員の借金ではないように、

中央省庁の負債は、国民の負債ではありません。
 

5.財務省の行政執行の結果責任を、あいまいにぼかす目的が見える
 
6.実際のバランス・シート(貸借対照表)

■1.国と中央政府を同一視するように見える財務省

財務省は、「国のバランス・シート」と言っています。

内容は、中央政府のバランス・シートです。

本来は、「国のバランス・シート」ではない。

国(Nation)は、独立に意思決定ができる経済主体でいうと、
(1)5300万の世帯、(2)260万社の企業(法人)、
そして(3)中央政府、及び(4)地方自治体の4つです。この合計が、国です。政府=国家ではない。

(注)法人数は、2012年で413万社(経産省)とされていますが、
帳簿を整えて青色申告をしているのは260万社(国税庁:2002年)です。
活動がある企業は260万社でしょう。260万社の平均雇用数は20人です。

この、「国のバランス・シート」において、財務省は、無意識かもしれませんが、
中央政府を国(=国家)と言っていることになります。
財務省のこの論理で言えば、国民である企業や世帯のバランス・シートも、
国のバランス・シート含まれることになるでしょう。
これは、事実と反します。

(注)株式会社が多い法人も、人格の代わりに法人格をもつ法的な面での国民です。資産をもち、事業を行って、納税の義務も負っています。

バランス・シートの数字の検討の前に、財務省が暗黙に前提としている、
「政府=国家」となる論の淵源を、短く探ります。
不分明なところがあるのが、この国家論です。

■5.財務省の行政執行の結果責任を、あいまいにぼかす目的が見える
 
財務省が「中央政府の貸借対照表」としなかったのは、

政府を債務超過に至らせた責任の所在をぼかして、国に拡散するためとしか思えないのです。

後述しますが、債務超過は490兆円とされています。
債務超過は、負債(国債と長短の借入金)に対応する資産が残っていないことです。

日常用語では「穴が開き純借金になっているもの」です。会社の場合、資産がなく債務超過になると銀行からの借金ができず破産しますが、政府は、公共の信用があり破産しないとされています。

債務超過の貸借対照表になることに関与してきたのは、予算を管理する財務省です

省庁の上に立ち、(1)国債(借用証)の発行、(2)財政支出、(3)外貨準備のなどの入金と出金を管理していたのは、財務省だからです。

政治(国会)が財政支出の予算を承認したにせよ、
「赤字国債の発行により債務超過を招くため不可能です」と主計局が言えば、多くの財政支出はできなかった。ここそが、財務省が逃れたい管理責任です。

【高橋是清とブンデスバンク】
高橋是清は、軍部の予算縮小を、財政を預かる大蔵大臣として行い、2.26事件で暗殺されています(1934年)。大蔵事務次官が、財政赤字の拡大は将来の禍根を残し、不可能と言えば、その拡大は防げたでしょう。

政府の財政赤字は、2015年で名目GDP比6.8%(34兆円)で、主要国では最高です。国債の残高もGDP比2倍超で1位であり、GDPに対する増え方も先頭です。

ドイツのブンデスバンク(ドイツ中央銀行)は、財政赤字からの国債の買い取りは抑制し、政府に均衡財政を要求し続けています。
国債を買ってマネーを増発することは、ドイツの財政の将来のために、
行いません。(注)19か国のユーロの維持のためには、ユーロ国債の買いを行っています。

以上の前提で、主計局が作った「国の貸借対照表」を解釈し、検討して行きます。

■6.実際のバランス・シート(貸借対照表)

論理で言うだけでなく金額数字を示します(2013年3月期、2015年1月公表)。
メディアは取り上げませんが、財務省のサイトには、毎年、出されています。


▼「国」の貸借対照表

【資産】
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・現金、預金  18.6兆円(現金と日銀などへの預金)
・有価証券  129.3兆円(財務省が管理している外貨準備)
・貸付金    137.9兆円(自治体や政府系金融機関への貸付金)
・運用預託金 104.8兆円(公的年金の基金の運用をGPIFに預託)
・固定資産    177.7兆円(道路・河川、公共の建物、省庁の土地、
            建物、防衛、空港設備など)
・出資金    66.3兆円(特別会計の独立行政法人、国立大学、
            国際機関への出資金)
・その他資産  20.1兆円
  (未収金11.9兆円、前払い費用1.3兆円、その他資産6.9兆円) 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
資産合計    652.7兆円

(注)1143兆円の負債に対応する不足資産は490.4兆円で、
これが、債務超過分です。

【負債】
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・政府短期証券  101.8兆円(外貨準備を買うための短期国債)
・国債      855.8兆円(建設国債260兆円、赤字国債449
              兆円、年金特例公債5.2兆円、財
              投債104兆円、復興債9兆円、原子
              力支援の交付国債1.3兆円など)
・借入金     28.4兆円 (原子力賠償支援などの借入金)
・年金預かり金  112.2兆円(国民年金、厚生年金等の基金)
・その他負債    45.1兆円
 (未払い金11兆円、預託金7兆円、責任準備金9.4兆円、退職給
  与引当金9兆円、その他負債8兆円など)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
以上の負債合計 1143.1兆円

この負債は合計で、2012年3月期に対し、25.9兆円増えています。

同時期の資産の増加は12.5兆円だったので、477.0兆円の債務超過(2012年3月)が、490.4兆円に増えています。

この貸借対照表を最初に作った2002年3月末の、資産は765.3兆円、負債は992.7兆円、債務超過は227.4兆円と、まだ穏やかな金額でした。
 
その後、2013年3月末までの11年間で、債務超過額は490.4兆円へと、263兆円増加しました。1年平均で23.9兆円です。

政府の債務超過額は、資産の増加より負債の増加の速度が速いため、1年にほぼ23.9兆円平均で増加します。

政府の債務超過は、2020年までの近い将来に、問題になるのか。
問題になるとすれば、どういった内容か。問題でないとすれば、
それはどういったことか。
 
バランス・シートの数字の検討の前に、財務省が暗黙に前提としている、
「政府=国家」となる論の淵源を、短く探ります。

不分明なところがあるのが、この国家論です

(注)翻訳語からできたものは、元の英語にさかのぼると、
理解の手がかりが得られることがあります。政府は、Government(統治機構をもつ政府の意)であり、
国家はNation(人々と社会及び経済の関係から見た国、国民国家)でしょう。
明らかに違います。われわれが国と言うとき思い浮かべるのはNationです。
 
しかし、財務省にとってはGovernmentでしょう。中央政府のバランス・シートを、国のバランス・シートと言い換えるところからも、これが分かるのです。
国家破産は政府の破産ですが、Nationの破産ともされているようです。

■2.王制の時代

財務省が、中央政府を拡大して「国(=国家)」と言うのは、王制の時代(日本では江戸幕府や明治時代)の、国民の統治からの流用でしょう。Governmentの原義は、国民の統治です。統治とは主権者であった王が、国土と国民を支配することでした。

(注)現代の主権者は、国王(江戸時将軍、明治時代は天皇)ではなく国民とはされています。主権とは国土と国民を支配する国家の権力のことでしょう。

財務省は中央政府を国(国家)と言っています。このため、中央政府の資産・負債が、国の資産・負債になっています。

政府の負債である国債も、あたかも、国民1人当たり700万円などの例えに展開され、あたかも国民が負う負債であるかのように書かれているのです。

こうした「国=政府」の混同は、辺野古の基地問題でも現れます。
米軍基地の移転は、国の防衛のために、自治体より上位にある中央政府が決定したことであり、沖縄県には拒む権利はないとして提訴されています。中央政府が、自治体の上に立つことを主張するものです。つまり「中央政府は国家なり」です。

旧名の大蔵省は、紀元7世紀の律令制から続くものでした。大蔵省は天皇家の経理部でした。
律令制では、国土の全部が、天皇の所有だったからです。

(注)中国では、土地は政府の所有です。売買されているのは、70年(住宅)、50年(工業用)、40年(商業用)の、土地の使用権です。

律令国家の人民には、耕作地が支給され、地代として、租税・労役・兵役つまり租庸調という税が払われていました。財務省には、未だに、この時代の意識が、DNAとして残っているようです。

【国民の資産の50%以上は、政府のものだと主張するのが相続税】
今年から導入されたマイナンバーは、男女で1000万人の団塊の世代の資産と金融資産を名寄せし、相続税を漏れなく課税するのが真の目的です。
現在、相続税の最高税率は3億円超で50%ですが、これは60%、70%に上がるでしょう。

財務省にとって、ほぼ20年後からの相続税こそが、国債を減らす財源とされているようです。2015年での相続税収の予定は、団塊の世代の多くが生きているので1.76兆円です。20年後からは、15兆円や20兆円(消費税換算で7~9%分)を超えるはずです。

相続税は、律令のように、資産の50%以上は政府のものであり、存命中に、政府から貸与されているものだという考えから課税されるものでしょう。ラスベラスや、租税回避地のタックス・ヘイブンでの相続税はゼロです。

世界で50カ所もあり、元々は、課税を逃れる英国王の資産の在り処から発展したタックス・ヘイブンには、世界の銀行資産の50%(推計5000兆円相当)が預託されていると言われます。

(注)現在の相続税は、1人当たりの相続資産1000万円以下10%、3000万円以下15%(控除50万円)、5000万円以下20%(控除200万円)、1億円以下30%(控除700万円)、3億円以下40%(控除1700万円)、3億円超50%(控除4700万円)です。

■3.わが国の行政では、王制が事実上、継続した

世襲制だった王権(江戸幕府の絶対的な統治権)が、選挙制に代わったのは、1878年(明治11年)の地方議会からでした。

戦後の1947年、日本国憲法を発布したあと、順次、現在の民主制になってきたと見ていいでしょう。占領軍は、軍隊と財閥を解体しましたが、行政機関であった省庁は、占領政策の便宜のために、存続させたのです。

戦前からの組織が連続した財務省は、意識の中に、明治の天皇制(王制=君主制)のDNAを引きずっています。戦前は、天皇の事務官だったのが省庁です。

以上が、中央省庁の資産と負債を示すバランス・シートを、「国(=国家)」のバランス・シートと、無反省に混同している理由の、根にあるものでしょう。聞きただせば、財務省も、中央政府のバランス・シートと答えるかもしれない。では、なぜ「国のバランス・シート」としたのか。

こうした考えが基礎になって、
・中央省庁の財政の破産、つまり国債のデフォルト(支払い不能)が、国家の破産とされ、・暗黙に「国が破産する=国民や企業が破産する」ような、イメージを与えています。

財務省が、ことあるごとに「国民1人当たりの国債(約700万円)の数字」を持ち出すのは、変なことです。

国債は、国民の負債ではありません。国債は中央省庁が、行政の執行のために借りてきた負債です。借りているのは、中央省庁です。

政府の財政の管理は、財務省が行っています。政府に属する経理部が、利付き借用証として、国民である金融機関と世帯に売ったものが国債です。会社の借金が社員の借金ではないように、中央省庁の負債は、国民の負債ではありません

以上のような概念の混同の源には、実は、幕府が三権を支配していた王制(封建制)があります。

▼国家の統治権
財務省は無意識に、Government(封建制では幕府;現代では政府)を国家と考えているようです。大学の頃、当時の大蔵省を目指す学生が、「国家の仕事をする」と言っていたのを記憶しています。

王制でのGovernmentがもっていた統治権は、(1)法を作る司法、(2)法を解釈し適用する司法、(3)法を執行する行政という、3つの権利の合計から成っていました。

【権利と義務】
**権の権利とは、個人または立場(役職:ポジション)に与えられ、他からの承認を受けずに、物事や他人に対して実行することのできる資格です。例え会社の経営権は社長が持ち、その経営権を、専門的な部署の、部長が委任を受けて分有しています。

権利の逆の概念である義務は、個人または立場に与えられた、実行せねばならないこと、または禁じられることです。たとえば親は子を扶養し、教育を受けさせる義務をもっています。

【民主政体での人権】
近代社会においての人の基本的な権利である人権は、幸福を求めて生きることができる資格です。具体的には、生きる権利、思想の自由、表現の自由、婚姻の自由、職業の自由、居住の自由、資本主義につながるマネーと財産保有の自由、宗教の自由、信条(信念)の自由などから構成されています。自由とは、他からの命令や強制からではなく、自分の意志と考えで行動するできることです。

▼三権を、行政が占有していた王制
王制の時代は、法は王が作り、法の解釈と適用権も王に帰属し、裁判と軍隊や警察を含む行政も、王の指揮下にありました。個人の人権も、制限されていました。絶対的な主権をもつ王は、違法行為を行ったという理由からではなく、会社や商人組織も取り潰しができたのです。ロシアで、ガスプロムを支配したようなことです
(2008年)。

選挙制ではない共産党独裁の中国では、思想の自由、表現の自由、言論の自由、居住の自由は制限されています。インターネットでの言論も自由ではない。選挙で選ばれる国会もない。中国ではまさに、土地も所有する政府が国家でしょう。

王制を覆した民主制では、国家(政府)がもつ立法、司法、行政の統治権(統治する権利)のうち、・法を作る立法権は、選挙で構成員である代議士を選んだ国会に、・法を解釈し適用する司法権は、法の解釈をする専門家である裁判所に帰属するように変えます。
身分制だった国民には、それぞれが幸福を追求し、財貨を求める人権が、付与されています。

王と王の官僚が独占していた統治権のうち、最上位のものである立法(法を作る権利)は、選挙で選ばれた代議士で構成する国会で行うことにします。

【憲法の原義】
憲法を最高法規とする立憲主義での憲法(Constituton)は、もとは絶対的だった王権を、国民が制限をするものでした(立憲君主制)。

国民の義務((1)勤労の義務、(2)納税の義務、(3)子息の教育の義務、(4)兵役の義務)などを、定めるものではなかったのです。

(注)兵役の義務は、自衛隊はあっても軍隊ではないとされている戦後のわが国では、除外されています。徴兵制があると、韓国や米国のように、一定期間の兵役が義務になります。

■4.現代の行政権
官僚がもっている行政権は、国民を統治する王権(これを主権とも言う)から、立法と司法を引いたものです。その範囲は、近代国家では、とても広くなっています。経済と金融、そして国民の厚生(年金や医療)に、行政が関与したからです。

わが国では、内閣官房、法制局、安全保障会議、人事院、内閣府、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文科省、厚労省、農水省、経産省、国土交通省、防衛省、会計検査院などが行っているのが行政です。かつては、王に帰属した官僚(わが国では武士)が行っていたことです。

行政の長(大臣の任免権というもっとも強い権限をもつ人)が内閣総理大臣です。首相(大臣の長の意味)とも言いますが、首相は、国会が多数決で選びます。

議員は政党を作っているので、議員数がもっとも多い政党の長(総裁や党首)が首相に選ばれます。首相が大臣や長官を任免し、内閣(cabinet)を組織する権限をもっています。

首相を選ぶ国会議員を国民が選挙で選ぶということから、「代議的な間接民主制」と呼ばれます。

階級制が強い、省庁の官僚組織は、「形式上」は、大臣の指示・命令に従う事務官です。会社で言えば、省庁の長である事務次官は、社長(首相)の行政的な執務を、専門的に分有する部長に相当します。大臣が、部長の上の権限をもつ役員でしょう。

しかし近代国家では、行政の執行内容が、警察権だけでなく、社会福祉、経済、金融を含んで拡大しています。

この行政の範囲の拡大とともに、専門的になってきたことから、事実上、「数字、論理、統計」をもつ事務官が行政のほとんどを執行しています。つまり、事務官の階層組織である省庁が、行政を執行(Excecute)しているのです。統計の原語であるStasticsは、国家から来ています。

麻生財務大臣よりも事務次官が、財務省の所轄である行政の執行における指揮・命令では、圧倒的に大きい部分を占めているでしょう。

政府の経理部である財務省(特に主計局)が、中央省庁の資産と負債の対照表であるバランス・シートを、「国の貸借対照表」と表現している理由を求めると、以上のような感想を抱くのです。

封建時代の王権であった行政権(国債発行、年金支給、医療費、介護費などで拡大した行政を執行する権利)を引きずっているのが、財務省でしょう。

GDP(=国民総生産=国民所得)に対照して言うと、2015年度では一般会計(96兆円)と、特別会計(重複を引いた195兆円)の合計で、291兆円です。

(注)一般会計と特別会計には、資金取引が混じるので、GDP(所得という付加価値)の中で291兆円を占めると言えません。国債の償還等を除いた、ほぼ180兆円(GDPの36%)が、一般会計と特別会計によってGDPが構成されている部分でしょう。つまり、GDPの約1/3ですが、これが、年々、大きくなってきたのです。

GDPの500兆円との比較では、ほぼ36%が、官僚が管理している予算でしょう。総予算291兆円の行政執行の、結果としての資産と負債を示すのが、中央政府のバランス・シートです。

▼マネーの発行も王権に所属していた
王制の時代では、中央銀行(日銀)が行っている通貨の発行も、王権に帰属する重要な行政でした。江戸時代では、金を多く産出していた佐渡金山や、銀山(石見銀山や生野銀山)は、幕府が所有する「天領」とされていました。

発掘した金は、勘定奉行(現在の財務省)の管理下で、造幣局に当たる金座や銀座と言われる民間業者が請け負って鋳造し、鋳造費を受け取って幕府に献上していたのです。現在の「国庫納付金」であり、これは「税金」に相当します。

幕府が行政を執行するとき、小判を使っています。
小判は「政府である幕府が発行する通貨(政府通貨)」でした。

徳川幕府が倒れた明治初期の、小判の流通量は1億2683万両でした。
明治5年での人口は3480万人(現在の27%)と推計されています。
人口1人当たりの小判の量は、3.6枚です。江戸時代の後期に、3両あれば、1年の生活ができたという。
1両は、現在の通貨価値では10万円くらいでしょうか。ただし高かった米価換算では1両が4万円、安かった賃金では30~40万円、蕎麦(そば)の代金では、12~13万円相当という。蕎麦は600円くらいですから、1両で200杯のそばを食べることができたことになります。

■5.財務省の行政執行の結果責任を、あいまいにぼかす目的が見える

財務省が「中央政府の貸借対照表」としなかったのは、政府を債務超過に至らせた責任の所在をぼかして、国に拡散するためとしか思えないのです。

後述しますが、債務超過は490兆円とされています。債務超過は、負債(国債と長短の借入金)に対応する資産が残っていないことです。

日常用語では「穴が開き純借金になっているもの」です。会社の場合、資産がなく債務超過になると銀行からの借金ができず破産しますが、政府は、公共の信用があり破産しないとされています。

債務超過の貸借対照表になることに関与してきたのは、予算を管理する財務省です。

省庁の上に立ち、(1)国債(借用証)の発行、(2)財政支出、(3)外貨準備のなどの入金と出金を管理していたのは、財務省だからです。

政治(国会)が財政支出の予算を承認したにせよ、
「赤字国債の発行により債務超過を招くため不可能です」と主計局が言えば、多くの財政支出はできなかった。

こここそが、財務省が逃れたい管理責任です。


ソース: ◎ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則
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