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トヨタが目指す「究極の安全車」の現在地

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トヨタが目指す「究極の安全車」の現在地


自動運転プロジェクトのキーマンに聞く

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トヨタ自動車は2020年までに自動運転を実用化すると宣言しているが

トヨタ自動車は10月中旬、マスコミ関係者を対象とした自動運転実験によるデモンストレーション走行を公開した。その中身は「トヨタの自動運転、まだ乗り越えていない壁」(10月19日配信)で既報のとおりだが、トヨタ側は今の状況をどのようにとらえているのか。トヨタの鯉渕健・BR高度知能化運転支援開発室長にインタビューし、自動運転を実用化するための課題や技術の進化の方向性などを議論した。

自動運転のデモンストレーション走行を終えて

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清水:運転はできませんでしたが、いや、運転席には座れなかったのですが、実際に自動走行を経験するととてもおもしろい技術だと思いました。人間が行ってきた認知・判断・操作をすべてシステムが行っているので、なんだか不思議でした。しかし実際の道を走らせないと、どんな不具合が出るかわからないですね。
鯉渕:そうなんですよ。たとえば、天気のいい日に高架の日陰がくっきりと路面に映った場合や、数種類の線が複合する地点でシステムの制御精度が低下したり、周囲の車の様々な動きによって合流がうまくいかなかったりなど、リアルワールドでないとチェック出来ない課題がたくさんあります。
清水:ところで自律系センサーのキーテクノロジーはどんなものですか? 
鯉渕:信頼性を上げるために複数のセンサー情報のフュージョンが重要ですが、中でも距離精度が高いライダーが新たなコア技術です。初期のシステムは従来のセンサー構成にライダーを追加して周囲の障害物を網羅的に見る。そして将来的には最適構成にインテグレートしていくことになると思います。
清水:今回のデモ走行の設定速度は?
鯉渕:法定速度をベースにカーブや周辺車両を見ながら調整しています。今回の首都高などでは車速、ステアリングともに従来以上に細かくコントロールする必要があるので、車両運動制御のセッティングを、自動走行の車両として煮詰める必要もありました。ですからシャシー技術者がチームに入っています。
清水:実際に乗ってみると非常に上手なドライバーが運転しているなと感じました。ゆるいS字カーブではハンドルの切り始めなど、横揺れが少ないハンドルさばきでしたね。その一方、となりの車線に大型トレーラーがいても、同じ車幅距離で走るので、すこしトレーラーが気になりました。となりに車が大きいと人間はストレスを感じますよね。いつもより幅の間隔を取るとか、自動運転ではそうした判断ができないのですか?
鯉渕:それはもちろん可能です。人は気持ちよく安全に走れるよう、いろんな要素を複合的に判断して速度やコースを選んでいます。大型車両とは離れたいといったシンプルな判断もありますが、簡単にはプログラミング化できないものも少なくありません。欧米に多いランドアバウト(環状交差点)の走行などもその一つです。

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こうした分野は人工知能の領域になるため、今後の研究が必須。トヨタも、日米欧の大学機関と研究を推進中です。また、一般道を考えたときには、予測を含めた賢い判断、さらには初めて遭遇するシチュエーションでも何とか安全に切り抜けるといった能力も必要になるでしょう。そこまでいけば、自ら学習しながら賢くなっていくということも可能かもしれません。

セカンドタスクを“安全”にできるか?

清水:なるほど。AIが不可欠になりそうですね。ところでセカンドタスクはやらせた方が眠くならないのでは?
鯉渕:それはありうると思います。ただし、運転に向ける注意力とのトレードオフになる可能性もあるため、慎重な議論が必要です。一方で、スマートフォンが生活の一部となっている人たちなどは、許可・禁止に関わらず、走行中に使ってしまうという話もあり、どうすれば安全にセカンドタスクができるのかという発想の転換も必要かもしれません。
さらに、セカンドタスクにもスマートフォン操作のようなアクティブなタスクと、TVを見るといったパッシブなタスクがあり、運転行動に与える影響は違うと思います。
商用車では欧州のメーカーが長距離トラックの自動走行実現を考えているようです。追い越しなどはなく、レーンをキープしてまっすぐ走るだけですが、その間にドライバーが在庫管理などの「会社の仕事」をセカンドタスクとしてできるようにする。人件費、事故率、ドライバーの健康管理などを考えると、そのほうが交通システムとして安全で、コストも安くつくといった可能性があり、実現すれば物流に大きな変革をもたらすと思います。
清水:スマホ族はクルマのなかでも繋がっていたいはずですね。
鯉渕:ヘッドアップディスプレイや音声認識等の技術で、運転への注意力を落とさずにできるようにすることが必要ではないかと思います。そういったことを検討するために、今後ますますヒューマンファクターの研究や、人とクルマの協調技術が重要になってくるのではないでしょうか。
清水:人間はミスをする。機械もミスをする。この認識をいかにユーザーに説明しますか?
鯉渕:実際の交通環境は、皆でリスクと責任をシェアすることにより成り立っており、技術だけで100%を保証することは難しい。例えば99.9%はより安全・便利に使えるが、0.1%は事故が起きるかもしれない。そういった自動運転のメリットとリスクを社会的に共有した上で、交通システムの中にどう位置づけるかを議論する必要があると思います。
0.1%のリスクがあるなら、99.9%の安全・利便性はあきらめるという選択肢もあるでしょうし、インフラや新たな交通ルールによってリスクをもっと減らして受け入れるという考え方もあるかも知れません。大変難しい議論ですが、はじめから「できない」と決めるのではなく、チャレンジしていきたいと思います。なにかひとつブレークスルーすれば、一気にその方向に進んでいく可能性がありますから。

すべての人に、安全でスムースな移動手段を提供したい

清水:アリの一穴ですね。ところで、グーグルのようなIT企業は何を考えているのでしょうか?
鯉渕:他の企業がどういう思いでこの技術に取り組んでいるかはよくわかりません。ただ、この技術は「単に車が自動で走る」「さらに安全になる」といった側面だけでなく、地図の自動生成等を可能にする超高機能プローブ、そしてクルマのさらなる知能化への足掛かりといった意味を持っており、そこにさまざまな可能性を感じているのではないでしょうか。
清水:クルマがセンサーを持つという意味はビッグデータの価値をどう社会に生かすのか?とてつもない大きな宝の箱を開けたような気がします。さて、走るのが好きな豊田章男社長はどのように考えているのでしょうか?
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実験車には「Mobility Teammate Concept」のロゴ
鯉渕:(豊田章男)社長には「ニュルで俺に勝てたら、認めてやる」といわれています(笑)。まじめな話をすると、この技術ですべての人に安全でスムースな移動の手段を提供したいと考えています。運転を楽しみたいときに、思い切り楽しむことができるというのははずせませんが、運転できないとき、運転したくないときは信頼して任せることができるようにしたい。
そしてそのベースとなるのが、『Mobility Teammate Concept』。人とクルマが同じ目的で、ある時は見守り、ある時は助け合う、気持ちが通った仲間のような関係を築くトヨタ独自の自動運転の考え方です。
編集部註:ニュルとは「ニュルブルクリンク」と総称されるドイツ北西部にある過酷なコースで有名なサーキットのこと。世界の自動車メーカーが高性能スポーツモデルのラップタイムを競い合うなど、「スポーツカー開発の聖地」などと呼ばれることもある。
清水:自動運転を突き詰めるということは、人(ドライバー)が、どう判断し、どう行動しているかを、詳細に知ることが重要と。
鯉渕:そのとおりですね。
清水:ありがとうございました。
                                                         清水 和夫 :国際自動車ジャーナリスト



トヨタの自動運転技術





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