呼ぶモノ、呼ばれるモノ・・・
数十年前になりますが、私が上京してすぐに住んでいたアパートは、昔ありがちな風呂ナシ、水場は共同の古ボケたアパートでした。
相場に比べ半分以下の家賃で、敷金礼金もなく部屋を借りる事が出来たのと、男一人での上京だった為、汚くてもあまり気にせず部屋を借りました。
住み始めてから1ヶ月頃だったでしょうか…夜中に部屋の外の流し台から水が出る音がするんです。
「ジャー…」っと流れる音が続き、一向に水が止まる音がしません。
不思議に思い、外に出てみると誰もいなく、水道から水だけが流れていました。
その時は「誰か別の部屋の人の止め忘れだろう」と思い、水道を止め、眠りにつきました。
それから毎晩…必ず決まった時間に水道が流れるようになりました。
さすがに水道の音とはいえ、勢いよく流れる音は耳障りで、不動産屋に連絡を入れました。
すると、不動産屋が「それ、何時頃に水流れるんですか?」と聞くんです。
私は「確か、夜中の12時ちょっと過ぎ位かな…」と答えると、不動産屋はこう続けました…
「半年程前にその部屋に住んでいた人が、流し台で水道を流しながら手首を切って自殺したんです。その自殺した人はちょうど水が流れ出すのと同じ夜中の12時過ぎに命を絶ったらしく、次にその部屋に入った人も夜中に水道が流れ、その14日後に行方が分らなくなったんだ。」と…
その話を聞いて、私はとてつもない恐怖と寒気に襲われました。
だって、不動産屋とその話をした日は…水が流れだしてから14日目…
その日は恐怖でアパートに戻る事も出来ずに、公園のベンチで夜を明かし、翌日すぐにその部屋を出ました。
数ヵ月後、その町へ訪れる機会があり、ふとアパートの前を通ると、あの部屋に明かりがついていました。
次に借りた人も同じ体験をしたのでしょうか・・・
トンネルのバイク乗り
あれは高校三年の夏休みでした。
夜中、原付バイクで地元のビデオ屋に行く途中、細く長い トンネルを通りました。
すると、突然トンネルの中をフラフラと歩く人影が現れ、慌ててハンドルを切り人影をよけました。
ぶつかった衝撃もなく、無事よけたのだと思い、そのまま走るバイクのミラーで先ほどの位置を確認すると、その人影はいなくなっていました。
細く長いトンネルなので、人影が消えるハズもなく、「おかしいなぁ」と思い前を向きなおすと、何かに肩のあたりにあたりました…。
何かと思い振り向くと…先ほどの人影がバイクの後ろに乗っていたのです!!肩越しに見えるその男は、血だらけで、ものすごく苦しそうな顔で、ジッと俺の顔を見ていました。
俺は慌てて振り払うようにバイクを走らせ、近くの店へ駆け込み、今の出来事を話しました。
「…また出たんですね。」
という地元の店屋のおやじさんに話を聞くと、その男は何年か前に、トンネルで事故によって亡くなった男性らしく、未だ自分が死んだことに気づかず、助けを求めているそうです。
それからは、そのトンネルは通っていません。ふと、したきっかけで手前まで行ってしまった時も迷わずユーターンして別の道を帰るようにしています。
あの男の人は未だにトンネルの中で、助けを求めているのでしょうか…
20歳の頃付き合っていた彼と温泉旅館に泊まった時の事です。
当時、私も彼もフリーターでお金がなかった為、格安で泊まれる温泉宿を探し出し、1泊5000円(食事付)の古い旅館へ出掛けました.
メジャーな温泉街ではなかったですが、街並もそこそこで温泉も広く料理も美味しい.この値段なら得したなぁと感じていました.
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夜、彼が先に眠ってしまったので私は一人で温泉に入る事にしました.
部屋から出て大浴場に向かう通路の途中、昼間は閉まっていた扉が開いており『大浴場⇒』という古ぼけた案内板が貼ってありました.
昼間はたまたま閉まってた近道かな??と思い特に気にせずその扉の通路へ入りました.
通路を進んで2~3分…徐々に違和感を感じ始めました.夜中なので通路の明かりは弱く、薄暗い通路だったんですがいくら歩いても通路の先が見えないのです.
少し怖くなったのと、これなら昼間の順路で行った方が早いと思い、来た通路を引き返しました…しかしいくら歩いても扉の出口に辿りつかないんです.
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この通路に入った所から、私が折り返した位置まで来る途中、曲がったり分岐もなく、真っ直ぐ進んでいたので迷うはずもないのに、5分以上歩き続けても入ってきた所がなく通路が続くだけなんです.
何が起きたのか分からないし、迷路に閉じ込められたような気持ちになりとても怖くなりました.
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歩き出してから10分後位に…ザッザッー…ビチャッ…ザザー…と後ろから何か濡れた物を引きずるように人が歩いてくるような音がしてきました…最初は他の宿泊客かと思い安心したのですが、その足音は「ウゥ~…」という異様なうめき声と一緒にどんどん近づいてくるんです.
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私は怖くなり、慌てて通路を駆け出しました.すると、後ろから続く足音もどんどん早く、大きくなります.必死で走り、もう追いつかれる!と思った瞬間、頭を何かに掴まれ、息が出来なくなり、同時に私は気を失いました.
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気がつくと、私はロビーのソファーに横になっていました.彼に話を聞くと、私は閉まった扉の前で倒れていたらしく、私の帰りが遅く、心配して探しに来た彼が見つけてくれたそうです.
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翌朝、私と彼は旅館の仲居さんにその話をしました.すると、すぐに女将さんが部屋に来てこんな話を始めました…
昔この旅館で義父に監禁されていた10歳位の子供がいたらしく、虐待を続けられ、大浴場で頭を抑えられて溺死した事故があったそうです.
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それ以来、旧浴場に進む通路は扉で封鎖し、施錠しているそうです…今でもその旅館は営業しているみたいですね
廃墟の車イス
これは去年、友達と冗談半分で肝試しに行った時の話です。
地元から車で30分程の所に、数年前に廃墟になってから、地元では有名な心霊スポットとなっている建物がありました。元々は重度の障害や病気の方が入る介助施設だったそうです。
私も友達3人と一緒に車を走らせ、廃墟に肝試しに行く事にしました。
車を走らせ約30分…周りが林に囲まれた廃墟が見えてきました。外観は古い病院のような作りで、いかにも…という風貌でした。
今まで色んな心霊スポットに遊びに行っても、拍子抜けの事が多く、今回も何も起こらないだろうと気軽な気持ちで友達と一緒に中へ入りました。
古びた玄関を抜け、懐中電灯で辺りを照らしながら何事もなく、「リハビリテーション室」と書かれた部屋にたどり着きました。
一緒に行った友達も何度も肝試しをしているので、何の躊躇もなくドアノブに手を掛けました…すると、突然中から「…キィキィ…キィィ…」と金属がきしむような音がなり出しました。
一瞬、みんなで顔を見合わせた後、友達が「大丈夫!」と言いながらドアを開けました。
中には錆びてボロボロの車イスが数個並んであり、あたかも私たちが入ってくるのを待っていたようにコチラを向いて置いてありました。
ドアを開けた友達が懐中電灯で車イスを照らした瞬間、1台の車イスがコチラに向かって動き出してきました…どう見ても錆びてボロボロなのに徐々にスピードが速くなり、どんどん近づいてきます。
私たちは恐怖でパニックになってしまい、慌ててドアを締め、玄関に向かって走り、そのまま車に乗ってその場からスグに逃げ出しました。
後から聞いた話ですが、一緒に行った友達がリハビリ室から玄関へ向かって走っている最中に、後ろを振り返ったら、老人や中年男性が乗った車イスが何台も私達を追いかけて来ていたそうです。