巨大トイレどころじゃない海の汚染
「治療不能」の超危険バクテリアも…
選手は命とメダルのどっちを取るか?
【リオ五輪異聞】
開幕が間近に迫ったリオデジャネイロ五輪。ジカ熱を理由に男子ゴルフのトップ4が相次いで出場辞退を表明したが、テニス界にも波及し、ウィンブルドン準優勝のミロス・ラオニッチらが欠場を明らかにした。ただ、ジカ熱や治安だけが脅威ではなく、出場したばかりに一生健康を害する恐れが改めて指摘されている。オープンウォーターなどの競技が予定されるコパカバーナビーチなど計5カ所で「危険バクテリア」が検出されたとロイター通信が報じている。2年前から生活廃水の流入でセーリング会場となるグアナバラ湾の水質汚染が問題視されてきたが、五輪組織委員会などは水質が改善されたとして問題視していない。治療が困難な感染を引き起こす恐れがあるとされており、危険と隣り合わせでは出場も覚束ない。
AFP通信によると、男子テニスの世界ランク7位ミロス・ラオニッチ(25)と、女子テニスの同5位シモナ・ハレプ(24)が7月15日、ジカ熱による健康不安を理由にリオ五輪への出場辞退を表明した。ラオニッチは自らのフェイスブック(FB)で「ジカ熱に関する不透明な状況を含め、さまざまな健康不安を考慮し、今回の決断に至りました」と説明。ハレプもFBで「テニスでのキャリアを終えたあと、子供を持てなくなるというリスクは冒せません」と心境を明かした。
これまでに男子では、世界ランク12位のジョン・イズナーや同9位ドミニク・ティエム、同20位フェリシアーノ・ロペス、同19位バーナード・トミック、同18位ニック・キリオスら有力選手が各自の理由でリオ五輪欠場を選択。女子でも2010年の全仏女王フランチェスカ・スキアボーネ、妊娠中のビクトリア・アザレンカが出場しない。ただ男子のアンディー・マリーやノバク・ジョコビッチ、ロジャー・フェデラー、女子のセレーナ・ウィリアムズら有力選手は出場予定とのことだ。
ところが、水辺の競技ではジカ熱以外に健康を害する事態が危惧されている。
ロイター通信は6月11日付で、水泳のオープンウォーターのほかにトライアスロンやウインドサーフィンなどの競技が行われるコパカバーナビーチやイパネマ、レブロン、ボタフォゴ、フラメンゴの計5カ所で泌尿器系や消化管系、さらに肺や血流に治療が困難な感染を引き起こすという危険バクテリアが検出されたと報じた。抗生剤が効かないという。リオの研究者によると、下水処理施設の不備が水質汚染の原因になっている。
2014年12月に発表された研究結果では、セーリング競技などが行われるグアナバラ湾でスーパーバクテリアの存在が確認されていた。AFP通信は、環境専門家による調査結果として、リオに住む約1200万人分の下水がそのままの状態で流れ込んでいると報じた。さらに14年8月、グアナバラ湾は犬や猫の死骸やテレビ、ソファなどのゴミにあふれ、地元生物学者から「巨大なトイレ」と呼ばれるありさまだとした。15年2月には2日間で計12.3トンの魚の死骸が回収されていた。
五輪組織委は14年10月に五輪開催までに80%程度の浄化を約束したが、15年8月になって浄化は60%と下方修正した。それでも国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は同時期にリオを訪れ、自ら海に入って安全をアピール。「重要なのは、選手たちのために競技会場のコンディションを整えることだ」と語っていた。約束の不履行は明確になった格好だ。
この理不尽な事態に、リオ五輪の施設建設に使われた国からの補助金をめぐって汚職の疑いがあるとして調査するブラジルの検察当局が、水質改善プロジェクトに投じられた資金についても捜査を行うと発言した。グアナバラ湾の大幅な水質改善が五輪開催の公約として挙げられていたが、汚染は改善されないままとなっていることを疑問視したのだ。不正によって水質が改善されず、選手の生命が危機にされる事態は許されるわけがない。
リオ五輪開催まであとわずか。水質の改善は困難だけに、出場選手の無事を祈るしかない。
五輪のリオ、死ぬほど危険?感染病で死者続出、強盗は日本の6百倍、最悪の衛生環境…
リオデジャネイロ、コルコバードのキリスト像(「Thinkstock」より)
今回は、リオデジャネイロにオリンピックの応援に行くのかどうか、という話で盛り上がっています。
“極論君”は「絶対に行くべきではない!」と主張しています。理由は3点。1点目は病気です。ジカ熱の流行が昨年から話題をさらっています。妊婦が感染すると小頭症の子供が産まれる危険があります。これは蚊によって媒介されるので、妊婦は絶対にリオデジャネイロに行かないほうがいいです。問題は性交渉でも感染することが判明しており、リオデジャネイロに行った方との性交渉は要注意です。
さて、もうひとつ豚インフルエンザが流行しています。先月のブラジル保健省の発表では、この半年間ですでに1000人以上が感染して死亡しています。死亡率は通常の季節性インフルエンザとは変わらないという報告もありますが、でも気持ち悪いですね。そして北半球の8月は夏ですが、南半球のブラジルの8月は冬なのですよ。インフルエンザの流行が爆発的に起こってもおかしくないですね。
そして町全体の衛生状態も悪いそうです。セーリング会場となっているグアナバラ湾は、地元では巨大トイレといわれるように、汚物を含んだ下水道の放流先なのです。そんなよくわからない病気が流行っている、そして衛生状態が極端に悪い町にオリンピックだから観光に行くというのも馬鹿げているという主張です。
そして第2は治安の悪さです。リオデジャネイロで2014年に発生した強盗件数は約8万件で、人口に換算して日本の約500倍以上の危険率です。高速道路での銃撃事件があったり、また観光客が出入りするのは極めて危ない地域であるファベーラが五輪施設のそばにあります。本当に危険と隣り合わせです。
第3は不安定な政治です。ルセフ大統領の弾劾裁判がオリンピック期間中まで継続するなど、政治の不安定さは相当なものです。こんな状態では、公衆衛生や治安などの国家的対策が本当に完璧にできるのでしょうか。そんな危惧を極論君は持っているのです。
まったく問題ない?
“非常識君”は、まったく問題なくブラジルの応援に行くと言います。しかし、ホテル代も飛行機代も高いので、懐具合と相談してのことだそうです。彼の主張は、ジカ熱の不安に関しては、妊婦以外はまったく問題ない。性交渉で感染が広がるのはごくごく希で無視できる程度。そして豚インフルエンザも季節性インフルエンザとの死亡率が変わらないという報告もあるので、抗インフルエンザ薬を持参するそうです。
そして風光明媚なグアナバラ湾は巨大なトイレであろうが、海水浴に行くわけではないので、応援部隊にはまったくリスクにならない。水を飲むのが心配なら、すべてミネラルウォーターを飲むので心配無用。強盗が日本の600倍以上といっても殺人事件はさほど多いわけではない。危ない場所は世界の観光地であればどこにでもあることで、日本が極めて安全なだけ。大統領に関する政治の不安は確かにあるが、表面的にはブラジルでは何も起こっていないので、基本的な心配はしていない。
以上が、非常識君の主張です。
厚労省は渡航自粛を促してはいない
“常識君”は、「それぞれが正しい情報を事前に持って、そしてオリンピックの応援という楽しみといろいろなリスク要因をくらべて、各自が判断すれば良いこと」といつものように優等生の発言です。少なくとも世界各国から多数の選手団応援団を迎え入れるのですから、それなりの準備はできていると思いたいですね。
そこで正確であろう情報源のひとつである厚生労働省のHPを見ると、「海外で健康に過ごすために」という欄の2016年には「オリンピック・パラリンピックでブラジルへ渡航される方へ」というお知らせがあります。そこには、「ブラジルには一部に黄熱の予防接種が推奨される地域があります。渡航観戦が良き思い出となるように、黄熱の予防接種において注意していただきたいことをご案内します」とありますが、ジカ熱や豚インフルエンザなどの記載はありません。厚労省としても渡航の自粛などは勧めていません。つまり非常識君の言うことも間違っていないように思えます。
悩ましいですね。しかし、100%安全などということは日本にいてもないのですから、ブラジルに応援に行くことができる方は、普段以上の注意を払って、不運なことに遭遇しないように、そして観戦旅行が良き思い出になることを祈っています。ブラジルにお金や時間がなくて不幸にも行けない方は、より安全な日本で、みんなでテレビ観戦をしましょう。
(文=新見正則/医学博士、医師)
(文=新見正則/医学博士、医師)
●新見正則(にいみ・まさのり)
1959年生まれ
1985年 慶應義塾大学医学部卒業
1985年~ 慶應義塾大学医学部外科
1993~1998年 英国オックスフォード大学医学部博士課程
1998年~ 帝京大学医学部外科に勤務
1959年生まれ
1985年 慶應義塾大学医学部卒業
1985年~ 慶應義塾大学医学部外科
1993~1998年 英国オックスフォード大学医学部博士課程
1998年~ 帝京大学医学部外科に勤務
幅広い知識を持つ臨床医で、移植免疫学のサイエンティスト、そしてセカンドオピニオンのパイオニアで、モダン・カンポウやメディカルヨガの啓蒙者、趣味はトライアスロン。著書多数。なお、診察希望者は帝京大学医学部付属病院または公益財団法人愛世会愛誠病院で受診してください。大学病院は紹介状が必要です。
転載元
biz-journal.jp >
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