ウォン安でも復活できぬ韓国
〝中国依存の代償〟思い知る
海外マネーもついに逃避か
【経済裏読み】
通貨安の恩恵が及ばず景気に閉塞感が漂っている。日本のことではない。韓国の経済だ。中国への依存を深めた韓国の通貨ウォンに対して、売り圧力が強まっているのだ。通貨安は輸出企業にとって、メリットになるはずだが、外貨建て借金も多い韓国では、過度なウォン安は内需を冷えませる原因になる。たまりかねた韓国政府は、ウォン安を食い止める口先介入に乗り出したが、市場は意に介さぬ様子だ。
崩れる方程式、ITバブル崩壊以来の輸出減
「通貨安=輸出増の公式が崩れている」
3月に入り、こんな指摘が韓国メディアで目立つようになってきた。
足元の3カ月間でも、ウォン相場は1ドル=1150ウォン台から1230ウォン台へと7%近くウォン安ドル高が進行。ウォン安は、輸出を牽引するとみられていたが、ふたを開けると、期待は大きく裏切られていた。
韓国経済新聞(日本語電子版)によると、韓国政府が発表した2月の輸出額は前年同月比で12%下落し、過去最長の14カ月(1年2カ月)の減少。米ITバブル崩壊の打撃を受けた2001年3月から2002年3月までの13カ月連続を更新した。
ウォンはリスク資産か
ただこれは、ある意味当然である。
韓国の大得意先となった中国の懐具合がきつくなってきて、以前より、モノを買う余裕が乏しくなっている。なにより、ウォン売りを引き起こす背景にこそ、中国の景気減速があるからだ。
例えば、中国景気の先行きに不透明感が強まれば、比較的、安全資産とみなされている円は買われるが、韓国のウォンは逆にリスク資産として、売られる通貨になりやすい。人民元とも連動しやすく、中国が輸出促進を狙って切り下げに踏み切れば、ウォン安は一段と進む可能性がある。
「ウォン安=輸出増」というテコ入れモデルが通用しなくなったのは、中国頼みの成長路線の代償でもある。
朝鮮日報によると、韓国の約25%を占める対中輸出は1月は12・9%減と8カ月連続減少した。
「中国=韓国」という新たな公式?
ウォン安の衝撃は、貿易分野だけでない。韓国の家計にも影を落とす。
日本でも、円安は輸入物価に上昇という副作用をもたらすとの指摘があるが、韓国の問題はこれにとどまらない。
第一生命経済研究所の
西浜徹主席エコノミストは「過度なウォン安は元利払いに伴う債務負担の増加を招く」と指摘する。
韓国の家計部門の債務残高は、国内総生産の7割に相当する1100兆ウォン(101兆円)を超え、不況を引き起こす「時限爆弾」に例えられる。
借金には、円やドルといった外貨建ての住宅ローン商品もあり、ウォン安が進むと利払いがかさんで、家計を圧迫する恐れがある。輸出による外需が勢いを欠く中、内需も冷え込む事態となれば、韓国経済の深刻度は増す。
国際情勢に翻弄される韓国の先行き不信は、すでに外国人投資家の動きにあらわれる。海外資金が韓国からじわりと流出していたのだ。韓国の外貨準備は、昨年6月末をピークに75億ドル(8538億円)減ったという。
韓国は、アジア通貨危機を教訓に韓国は潤沢な外貨準備高(3673億ドル、今年1月時点)を積み上げているため、すぐに危機的状況に陥るリスクは低いが、西浜氏は「事態が長期化した場合の影響は無視できない」とみる。
「市場で偏りの現象が進んでいることを懸念している」。2月19日、韓国銀行の当局者は、1ドル=1230ウォンと、5年7か月ぶりのウォン安水準を付けたことを受けて、ついに「口先介入」に踏みきった。それでも、ウォンの売り圧力は弱まっていない。
そこには、「中国=韓国」という公式を当てはめる市場のシビアな見方がうかがえる。