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【国際】TPPに「中国外し」の意図 中国の経済研究所長が環太平洋諸国を批難

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TPPに「中国外し」の意図
中国の経済研究所長
環太平洋諸国を批難
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 中国国家発展改革委員会対外経済研究所の畢吉耀所長は8日、都内の中国大使館で会見し、先に日米などが大筋合意した環太平洋連携協定(TPP) について、

中国など新興国が参入するためのハードルを高める意図が感じられる」と批判した。 

 所長は「アジア太平洋地域にはさまざまな自由貿易区があるが、中国を外すと効果は限定的だ」とけん制。
「(高い)基準を強いて、中国に譲歩させようとしているともみられる」と語った。 

 その上で「それぞれ発展の段階は異なるのだから、柔軟性が必要だ。

 参加を求められるなら途上国という立場を受け入れてもらう必要がある 

と指摘。




中国はやっぱり「中進国の罠」を突破できない!「中国ルール」の経済圏構想が抱える致命的な欠陥

現代ビジネス 12月7日(月)7時1分配信



中国はなにやら高揚しているが…

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 最近、中国政治・経済が急速におかしくなってきた。

 本コラムでも以下のようにテーマ、視点を分けて、中国の政治・経済問題を取り上げてきた。

 ○急ぎすぎた覇権(中国は見事に「中進国の罠」にハマった! 急ぎすぎた覇権国家化のツケ http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46183)

 ○経済成長率の低下(衝撃! 中国経済はすでに「マイナス成長」に入っている?データが語る「第二のリーマン・ショック」 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46183)

 ○無理なAIIB(アジアインフラ投資銀行)構想(日米が参加しないAIIBの致命的欠陥。中国は必ず日本に水面下で参加を求めてくる http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42865)

 その中国で、珍しく国民の気持ちが高まるような出来事が起こった。国際通貨基金(IMF)が11月30日の理事会で、中国人民元をSDR(IMFの特別引き出し権)の構成通貨に採用することを正式に決めたのだ。これは、中国という国のメンツをくすぐる出来事だ。

 SDRとは、IMF加盟国の準備資産を補完する手段として1969年に創設した国際準備資産である。ただし、SDRは通貨ではなく、またIMFに対する請求権でもない。

 むしろSDRは、IMF加盟国の「自由利用可能通貨」に対する潜在的な請求権であり、SDRの保有者は、保有するSDRと引き換えに、「自由利用可能通貨」を入手することができる。その際、SDRの価値を決める通貨バスケットは「自由利用可能通貨」から構成される。

 従来「自由利用可能通貨」として、IMFはドル、ユーロ、円、ポンドを指定していたが、それらに人民元を加えたのだ。これをもって、人民元も国際通貨の仲間入りと囃し立てる人もいる。

 一般論として、IMFが人民元をドルや日本円と並ぶ世界の主要な通貨として採用するとしたことで、加盟国との間の資金のやり取りなどに人民元が活用していくといわれている。通貨の世界でも中国の存在感が高まったというわけだ。

 これによって、中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)での取引の自由化も加速すると予想され、世界の金融界での中国の存在感がますます高まる、という見方がある。

耳を疑うようなニュースが入ってきた

 しかしIMFは、国際的に使われている通貨を「自由利用可能通貨」と認定するだけで、IMFの認定によって市場が本質的に変わるわけではない。あくまでIMFが市場の結果を追認するだけだ。

 今回の決定は、人民元が自由な市場で取引され、価格が自由に変動することを意味していない。人民元には中国政府の制約が多いという問題もある。今は変動相場制の時代であり、変動相場の中で人民元が「自由に使われるか」どうか、それが、真の「国際通貨」であるかどうかのメルクマールになるだろう。

 なにしろ、SDRといっても、通貨危機に備えて加盟国に配るものなので、危機になってSDRを差し出し、交換性の乏しい人民元を手に入れるのは考えにくい。いってみれば、SDRは滅多に使われない「仮想通貨」みたいなもので、その換金に人民元が使われるのはもっと考えにくいのだ。

 人民元が自由な為替市場の中で取引されるかどうかは後で論じるとして、先週、にわかには信じがたいニュースが聞こえてきた。

 「AIIB債、無格付け発行=設立当初、韓国引き受けか」という報道だ(http://www.jiji.com/jc/zc?k=201512/2015120300938&g=int)。

 AIIBの資金調達のため、発足当初に発行する債券が「格付け無し」になる見通しとのことだ。国際機関債で無格付けというのは聞いたことがない。おそらく、中国が「独自の国際ルール」を作ろうとしている、ということだろう。

 中国がAIIBの設立に精力的だったのは、中国中心ルールの経済圏がどうしても欲しいからだ。これを少し説明しよう。

 中国はこれまで自国経済への影響からTPPへの参加は消極的だった。というか、いまのTPPでは中国が参加できない理由がある。TPPでは貿易だけでなく投資の自由化(TPP第9章)も含まれていたからだ。中国は社会主義であるので、生産手段の私有化を前提とする投資の自由化を基本的に受け入れられない。

 なお、余談であるが、TPP反対論者からよく出されるISDS条項(編集部注:外国企業や投資家が国を訴えることができるようにする制度)も、この投資自由化に関係する。以下に述べるように、ふつうはまず問題ない。

中国がTPPに参加できない理由

 ISDS条項はこれまでの日本の投資協定にも何度も入っていた。日本でも20件以上、ISDS条項が入った投資協定が結ばれている。

 それらのISDS条項について、これまで日本が行使されたことは一度もない。ISDS条項で訴えられているのは国内のルール整備が未熟な新興国だ。日本はこれまでもずっとISDS条項を結んできたが、ガードが堅いほうの国なので、訴えられたことはない。外務省も含めて日本政府の役人はけっこう厳密にやるからだ。

 このISDS条項は、これでアメリカからオーストラリアがやられたと評判になったもの。しかし、実情は、アメリカとオーストラリアの間の協定ではISDS条項はなかったのに、アメリカのフィリップモリス社は、香港の子会社を使って、オーストラリアを訴えたのだ。

 もし、このように日本もやられるなら、とっくにやられているはずだが、日本の法律は外国企業に対して酷い差別的な扱いをしていないので、さすがのアメリカも手出しができなかったわけだ。

 中国は投資の自由化を最も嫌うので、ISDS条項は日本には有利だが中国には不利な制度だ。日本のTPP反対論者はまるで中国の走狗のような発言をしていた、というわけだ。

 また、TPPでは国有企業が大きな障害になる(TPP第17章)。外国企業が国有企業と対等な競争条件で事業を行うことができるように、国有企業への有利な条件での貸付け等は制約されるからだ。

 国有企業が大半を占める中国は、国有企業民営化などに迫られる可能性が高い。このため、この条項は、中国の国家体制を揺るがすことにもつながりかねない。

 国有企業が多く、GDPの3分の1程度を占めているマレーシアやベトナムがよくTPPに参加したものだ。これらの国は、今後国営企業を民営化するなどの大改革を行う決意なのだろう。

 さらに、知的財産の関係でも、知的財産保護の弱い中国がTPPに参加するハードルは現状ではかなり高い(TPP第18章)。

 以上のように、投資自由化、国有企業改革、知的財産保護において、中国はTPPに参加したくてもできない状態なのだ。特に、投資自由化と国有企業改革は、中国の体制問題に発展する可能性があるので、まず克服できないだろう。

中国経済の限界

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 TPPに参加できない中国の、国際経済におけるハンディキャップはきわめて大きい。そこで、投資自由化、国営企業改革、知的財政保護の必要のない、中国に有利なルールでの、経済圏を構築するために、AIIBを急いで設立しようとしていたわけだ。中国の言葉で言えば、「一帯一路」構想とそれを支えるAIIBである。

 ところが、AIIBにも暗雲が出てきた。それが上に述べた報道(「AIIB債、無格付け発行=設立当初、韓国引き受けか」)である。

 中国ルールの経済圏(「一帯一路」構想)とAIIBは、中国が中所得国の罠を突破するための手段と考えられているようだが、筆者から見ると、原理的に無理筋である。それを以下に示そう。

 中国がそろそろ一人当たりGDP1万ドルの壁にぶち当たろうとしている。

 その突破には、これまでの先進国の例を見ると、社会経済の構造改革が必要である。それは、先進国の条件ともいえる、資本・投資の自由化である。

 日本は、東京オリンピックの1964年に、OECD(経済協力開発機構)に加盟することによって「資本取引の自由化に関する規約」に加入し、資本・投資自由化に徐々に踏み出した。

 当時は、第二の黒船といわれたが、外資の導入は経済の後押しになったわけで、それが功を奏して、日本の一人当たりGDPは70年代半ばに5000ドル、80年代前半に1万ドルを突破した。

 資本・投資自由化をすれば、国有企業改革も当然やらざるを得なくなる。この意味で、中所得国の罠を突破できるかどうかは、いいタイミングで資本・投資自由化を行えるかどうかにかかっている。

 それには、資本主義経済のほうが踏ん切りが付けやすいだろう。少なくとも国営企業改革はそれほど難問でないからだ。この点、中国の社会主義体制は、資本・投資自由化を行えないという致命的な欠陥がある。
やっぱり見通しは明るくない
 資本・投資自由化がうまくいくと、為替の変動相場制を導入し、独立した金融政策が可能になる。日本やアメリカなどがそのケースだ。または、ユーロのように固定化された変動相場と、金融政策には独立性がない制度もある。

 これらは、上図のように国際金融のトリレンマとして、よく知られたことである。特に、独立した金融政策は、国内経済を維持するためにもっとも重要な経済政策手段を確保することになる。少なくともこれまでの先進国で、資本・投資自由化なしで経済発展してきた国はない。

 中国ルールの経済圏(「一帯一路」構想)とAIIBは、国際金融のトリレンマの中でいえば、自由な資本移動を否定し、固定為替制と独立した金融政策を行うという、これまで前例のない取り組みをおこなっているといえる。

 論理的に考えて、それがうまくいく可能性は少しはあるものの、資本・投資自由化がないと持続的な経済発展は望めないという意味で、筆者は先進国では「原理的に無理筋」と考えているわけだ。

 長い目で見れば、社会主義国の中国でも、こうした矛盾が出てくるはずだ。そうした視点からみたら、冒頭述べたようなおかしな問題が出てくるのは不思議ではない。

 広州、香港、マカオで数千社の倒産が起こっているという話にも驚かない。中国では、破産法制は必ずしも完備しているとはいえない。しかも、日本のように手形不渡りで銀行取引停止という処分もないので、倒産がなかなか顕在化しない。

 そうした国なので、例えば、香港の社債市場では、格付けなしの社債は珍しくない。であるから、AIIB債を無格付け発行したことも、別にニュースでないともいえるだろう。ただし、国際機関債で無格付けというのは聞いたことがないので、これが中国ルール、ということなのだろう。

 中国ルールの経済圏(「一帯一路」構想)とAIIBが原理的な部分で致命的欠陥を抱えている以上、長い目で見れば中国政治・経済の見通しは明るくないといわざるを得ない。
高橋 洋一



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