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自衛隊はどれほど強いのか

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法と強さ

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ヒゲの隊長が明言「自衛隊には“限界”がある」

「自衛隊はどれくらい強いのか」という問いに思いを巡らせる際、少なくとも1つの事実については明言することができる。初代イラク復興業務支援隊長の経歴を持つヒゲの隊長こと佐藤正久参院議員が自衛隊の法と現状に迫る。

佐藤正久(参議院議員)


 「自衛隊はどれくらい強いのか」と問われれば、「それは、想定する対象による」と答えざるを得ない。全世界の軍事費の約半分の額が投じられている米軍に比べれば、総合的に見て、自衛隊の力不足は否めない。一方、100年以上国内で建造し、運用してきた歴史を有する日本の潜水艦の技術と性能は、世界に誇れるものである。よって、自衛隊のことを一概に「強い」とも言えないし、「弱い」とも言えない。ただ、「自衛隊はどれくらい強いのか」という問いに思いを巡らせる際、少なくとも1つの事実については明言することができる。それは、「自衛隊には“限界”がある」ということである。ここでの“限界”とは、「法律の整備が不十分であるがゆえに、自衛隊では十分に対処できない事態が存在する」という意味である。

自衛隊は法律なくして動けず


 自衛隊は「法律」という根拠があってこそ行動できる組織である。法律がなければ、自衛隊は一ミリも動くことができない。法令を順守する組織である自衛隊は、「超法規的措置」をとることなど、断じて許されないからである。また、法律がないということは、任務として想定されていないことを意味するため、訓練などの準備をすることもできない。特にイラクやインド洋での国際協力においては、これまで特別措置法で対応してきたため、事前の準備訓練に課題があり、現場に多くの負担を強いてきた。更に国内では可能な武器使用が国外では制限されるという任務と武器使用権限の乖離が法的にあった。これら課題を改善するのが、現在、国会で審議中の「平和安全法制」である。

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「助けられない」自衛隊から「助け合う」自衛隊へ


 平和安全法制では、平時から日本有事まで切れ目のない防衛体制を構築しようとしている。例えば防衛出動に至らない事態、即ち平時から重要影響事態における「アセット防護」。アセットとは艦艇や航空機など「装備品」を意味する。法案では、「自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動」に従事する米軍等のアセットを相互に防護できるようにしている。現在、警戒監視中の自衛隊艦船等が攻撃された際、米軍は自衛隊を防護できるが、逆はできない。即ち「助けてもらうけど、助けられない」自衛隊が、本法案により「助け合う」自衛隊に変化する。

 更に状況が切迫し、例えば朝鮮半島有事、日本に戦禍が未だ及んでいない段階で、弾道ミサイル警戒にあたっている米イージス艦を北朝鮮の戦闘機から自衛隊が防護することは、国際法上、集団的自衛権にあたり、現在の法律では不可能。日本にミサイルが着弾し、国民に犠牲が出るまで、自衛隊が米イージス艦を守らなくて良いのかという課題があった。平和安全法制では、当該事態等を「存立危機事態」とし、自衛のための他衛、即ち自衛目的の場合に限り一部集団的自衛権行使を可能とした。即ち、これまで日本防衛の隙間であった日本有事前の「存立危機事態」においても日米の艦船等が相互に守り合うことが可能になった。「助けてもらうけど、助けられない」自衛隊から、相互に「助け合う」自衛隊にし、抑止力を高めようとするのが平和安全法制である。


限界を抱えながらも着実に備える自衛隊

 現行法上様々な“限界”を抱えているとはいえ、防衛省・自衛隊は可能な範囲で能力構築を進めている。その一つは、島嶼防衛への備えである。例えば、平成30年までに創設を目指す陸上自衛隊の「水陸機動団」。基幹になる部隊は、今年度中に新編される見込みである。水陸機動団は米国製の水陸両用車AAV7などを備え、将来的には約2000人を擁する部隊になる予定である。ちなみに、陸上自衛隊は10年前から米海兵隊と継続的に共同訓練を実施しており、水陸両用戦などに必要な技能の習得に励んでいる。

 その他、警戒監視能力の強化も急いでいる。例えば、航空自衛隊は長時間飛行可能な滞空型無人機「グローバルホーク」の導入を決定。新型の早期警戒機E-2Dも取得する。また、海上自衛隊は従来型の固定翼哨戒機P-3Cの能力向上を図ると共に、最新型の国産哨戒機P-1を20機調達する。

自衛隊の“強さ”を決めるのは国民

 自衛隊は法制度上の制約を抱えながら、今、この瞬間も国防の任に当たっている。しかし、それでも防衛政策に関する議論はなかなか前進しない。平和安全法制の審議に際し、木を見て森を見ない議論を続ける一部野党の主張はその象徴である。政治の停滞は、現場で汗する自衛官により多くの負担を強いることになる。「自衛隊はどれほど強いのか」を規定するのは、個々の装備や隊員の能力ではなく、行動を規定する法制度そのものであることを、立法を担う政治家も、その政治家を選ぶ国民も心に留め置く必要がある。


許されない「平時の自衛権」

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 自民党の危機管理プロジェクトチームが以前まとめた中間報告は、自衛隊が外国の武装集団に対抗するにしても、防衛出動以外では国際法規や慣習に基づく軍隊としての実力行使を行えず、国内の泥棒を捕まえる警察法規でしか武器を使用できないことを鋭く見据えている。

 警察官職務執行法が準用される武器使用は正当防衛や緊急避難などに限られる。相手が攻撃したあとに許される武器使用で、どうして重武装したテロリストに立ち向かえるだろうか。

 自衛権の発動である防衛出動もがんじがらめだ。「わが国に対する武力攻撃が発生した場合」かつ「他国による計画的、組織的な武力攻撃」という条件付きだ。国ではなく組織的な武力攻撃とはいえない過激組織のテロはあてはまらない。

 列国の軍隊は国民を守り、不法な主権侵害行為を排除する「平時の自衛権」を持っている。ところが日本はこの当たり前の権限が許されていない。憲法第9条が「陸海空軍その他の戦力」保持を認めていないからだ。自衛隊を軍隊でも警察でもない、あいまいな「実力組織」と位置付けてきたためでもある。9条を改正し、自衛隊を軍隊として正当に評価すればよいのだが、当面の方策としては成り立たない。
(産経ニュース 2015.2.22)


勝敗を決するもの

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それさえあれば自衛隊は戦える

「自衛隊はどれくらい強いのか」。あなた自身が、そう疑問に思っていた事実自体が問題だ。潮匡人が自衛隊の軍事力をわかりやすく読み解く。


陸自火力 危うい大幅減

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 陸上自衛隊の戦車と火砲の大幅な削減が進められている。一昨年末の新たな防衛大綱と中期防衛力整備計画により決まったものだ。だが、これで有事に即応できるのか、という不安と懸念がくすぶり続けている。防衛費は3年連続で増えるものの、肝心の防衛力が弱体化するという奇妙な事態が生じている。


「日本を守る力」陸自総火演 陸上自衛隊は、8月23日に
実施する平成27年度富士総合火力演習の応募を7月1日(必着)
まで受け付けている。


 削減は10年程度をかける。平成25年末、戦車は約700両、火砲は約600門だった。それを約300両、約300門にする。しかも戦車は北海道と九州のみに配備され、本州などには展開しない。代わりにタイヤで道路を走れる機動戦闘車を導入するが、戦車と同じ機能は発揮できない。火砲についても北海道以外は、各方面隊直轄の特科部隊に集約される。(産経新聞 2015.1.31)
軍事費11年ぶり増加 第2次安倍政権になって防衛関係費(当初予算)は2年連続で増加している。平成15年度以降、減少傾向を続け、民主党政権の24年度は4兆6453億円になったが、25年度は実質11年ぶりに増額となった。ただ、25年度の対前年度比の伸び率は0・8%にとどまる。26年度は2・2%だが、公務員給与の復活分を除けば実質0・8%増にすぎないとされる。国際的に日本の防衛関係費が多いわけでもない。5日の閣議で了承された26年版防衛白書によると、主要国の国防費(2012年度)の国内総生産(GDP)に対する比率は、日本は0・97%と1%を割っている。米国(4・0%)やロシア(3・1%)、韓国(2・6%)、英国(2・2%)に遠く及ばない。(産経新聞 2014.8.7 )


平和と力

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  • 在沖縄米海兵隊は抑止力か否か

    沖縄の海兵隊は中国への「抑止力」となっているのか。安全保障に詳しい神保謙・慶応大准教授と柳沢協二・元官房副長官補が語った。
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  • 米国による平和は維持できるか

    日本は改憲以外に生き延びる術があるのだろうか。一体何ごとが起こったのだろうか。内外のニュースに東京ドームの170倍の「人工の島」「砂の万里の長城」「つくられた主権」といった表現が飛び交っている。
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中国分析「日本は尖閣の制空権奪えず」

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 中国人民解放軍の専門家が航空自衛隊を中心に日本の戦力を検討した報告書で、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺をめぐる有事を念頭に「日本による制空権の確保は困難」と断定していることが分かった。日本は作戦機が少なく作戦持続能力が低いことなどを理由に挙げた。海上封鎖などによる日本封じ込めで「経済だけでなく戦力も破壊できる」とも指摘した。中国軍筋が明らかにした。

 中国軍による日本の戦力分析が明らかになるのは極めて珍しい。中国は昨年11月、東シナ海上空に防空識別圏を設定するなど航空戦力を重視しており、軍事対立を想定した検討が本格化していることを示唆している。

 日本では、日中航空戦力比較で日本優位との見方が多い。ただ日本の次期主力戦闘機F35本格導入のめどがはっきりせず、中国の次世代戦闘機配備が先行すれば逆転するとの声もある。

 報告書は空軍専門家らが共同で作成。日本の航空戦力の弱点について、艦船の護衛など多様な任務が求められる大規模局地戦で「空自の規模と作戦持続能力では十分に対応できず、制空権を奪って勝利するのは困難」と結論した。(共同)

■始動する国産ステルス戦闘機F3(産経新聞 2015.4.28)


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航空自衛隊のF4EJ改戦闘機(空自提供)


米操縦士驚いた「F4まだ飛んでるのか」

 防衛省はF4の後継機を決める次期主力戦闘機(FX)選定を平成20年夏に予定していた。ところが、米下院が有力候補の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターの禁輸継続を決めたため、政府はFX選定を延期した。FXは23年12月にF22と同じ第5世代機のF35Aライトニング2に決まった。これも配備が遅れる見通しのためF4の退役が先延ばしされている。
 電子装備などが充実したF15とF2が第4世代に分類されるのに対し、F4は第3世代機になる。中国は第4世代機を増強しており、ステルス性能を備えた第5世代機の開発も進めている。(中略)
 もっとも、空自に配備されているF4は、普通の第3世代機とは異なる。国内生産が完了した昭和56年から改修を進め、レーダーや情報処理能力を格段に向上させた「F4EJ改」が平成元年から投入されている。限りなく第4世代に近い戦闘機として、F15とF2とともに空自戦闘機「3本柱」の一角を担ってきた。(産経新聞 2015.4.17)

 ■陸海空、初の弾道ミサイル 防衛省が短距離弾道ミサイルの開発の検討に入ったことが25日、分かった。射程は400~500キロを想定し、沖縄本島に配備することで中国による尖閣諸島(沖縄県石垣市)など東シナ海の離島侵攻への抑止力強化を目指す。7月にまとめる防衛力整備の基本方針「防衛計画の大綱」改定案中間報告に明記、平成26年度予算案概算要求に調査研究費を計上したい考え。実現すれば陸海空3自衛隊が保有する初の弾道ミサイルとなる。運用は陸上自衛隊が行う方向だ。( 産経新聞 2013.06.26)

「吉田ドクトリン」の幻想

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F15戦闘機の操縦席で、発進の合図を待つ
パイロット。防衛省統合幕僚監部は、日本領
空に接近した軍用機などに対し航空自衛隊機
が緊急発進(スクランブル)した回数が平成
26年度は943回だったと発表した
=沖縄県の航空自衛隊那覇基地

 吉田首相は、朝鮮戦争の勃発、東西冷戦の緊張の中で米国政府から突きつけられた再軍備を「経済的にも、社会的にも、思想的にも不可能」として、日本の再軍備にモラトリアムをかけ、経済大国への道筋をつけた。

 しかし、この「吉田路線」なるものは、吉田首相自身が晩年、否定しているのだ。田久保忠衛氏によると、吉田首相は昭和38年に出版の著書『世界と日本』で以下の記述をしている。

 「私は日本の防衛の現状に対して、多くの疑問を抱くようになった。当時の私の考え方は、日本の防衛は主として同盟国アメリカに任せ、日本自体はもっぱら戦争で失われた国力を回復し、低下した民生の向上に力を注ぐべしとするにあった。然るに今日では日本をめぐる内外の諸条件は、当時と比べて甚だしく異なるものとなっている。経済の点においては、既に他国の援助に期待する域を脱し、進んで後進諸国への協力をなし得る状態に達している。防衛の面においていつまでも他国の力に頼る段階は、もう過ぎようとしているのではないか」

 「経済最優先、防衛最小限」という基本方針からの脱却が不可欠な状況に転換したことを吉田自身が50年以上前に明言していた。それでも、田久保氏が「日本を徘徊する妖怪」と評したように、「吉田路線」なるものは、「妖怪」か「モンスター」に変化して、日本をさまよい続けてきた。

 田久保氏は自著の中で、「第9条改正になぜ日本人が関心を示さないかという、いくつかの理由の根源には戦後体制をズバリ表現した『吉田ドクトリン』があると考える」と記している。

 集団的自衛権の行使容認に伴う安全保障法制の整備をめぐる議論の中でも、「妖怪」がさまよい、複雑怪奇なものとなってはいないか。欺瞞の憲法9条擁護と「反軍、絶対平和」にすら利用される「吉田路線」という妖怪。国民の安全を守り、国際社会の一員として何が求められているのか。本質的な議論がなおざりにされてはいないだろうか。主権回復を真に自覚し、“妖怪退治”に本腰を入れるときが来た。
(大阪特派員・近藤豊和 産経新聞 2015.5.1

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