狙われたベトナム・リーソン島
漁場の平穏破る中国艦船
体当たり、曳光弾攻撃も…
「右方向に現れた中国船に突然、体当たりされた」。ベトナム中部クアンガイ省の沖合約26キロ、南シナ海に浮かぶリーソン島の漁港で、漁師のグエン・チ・タインさん(31)が険しい表情で話す。木造船に残る修理の跡が生々しい。周囲には「金星紅旗(きんせいこうき)」のベトナム国旗を揚げる漁船が所狭しと停泊していた。
人口2万2000人、総面積約10平方キロ。島民の多くは漁業を生業にしている。今、平穏なはずの島が緊張に包まれている。漁場がベトナムなどの周辺国と、中国が領有権を争うパラセル(中国名・西沙)諸島とスプラトリー(同・南沙)諸島に近いからだ。
近年、中国はこの海域で人工島の建設や石油の採掘を活発化、影響力を強めている。
ベトナム漁船への妨害行為もエスカレート。昨年5月にはパラセル諸島近海でベトナム船が衝突され沈没したが、中国外務省は「ベトナム漁船がぶつかってきた」と非難した。
漁師歴33年のズオン・ミン・タインさん(61)は今年9月下旬、恐怖の体験をした。「中国海警局の艦船など6隻に囲まれ衝突。自分の船の2倍以上は大きかった」。また、「中国船に曳光弾を撃ち込まれたり、洋上で乗り込まれGPS受信機や漁具を壊されたりした仲間もいる」とも訴えた。(写真報道局 松本健吾
探訪 漁場の平穏破る中国船 ベトナム・リーソン島
サンマ、中台の乱獲どう防ぐ
日本は厳しい駆け引き必至
マグロだけでなく庶民の魚として親しまれたサンマに対しても資源保護が必要になったのは、中国や台湾などが北太平洋の公海上でサンマを乱獲していることが背景にある。アジア各国の所得水準の上昇や健康志向の高まりによりサンマの需要は拡大の一途で、適切な管理をしなければ資源が枯渇するのは必至だ。最大消費国の日本が資源管理を主導できるかが安定供給のカギを握る。
3日に開催された北太平洋漁業委員会の初会合で、急増する中国漁船10+ 件の隻数削減を求める日本の提案に中国は反発した。今後、日中両国間で協議を続けるが「中国が日本の提案に従うかは不透明だ」(水産庁関係者)という。
日本のサンマの漁獲量は平成20年の34万3225トンをピークに減少が続き、25年には14万7819トンに激減した。サンマは太平洋全域に生息するが、日本は主に排他的経済水域内で漁獲し、公海上では少ない。
一方、中国や台湾などの漁獲量はここ10年で急増している。特に台湾は中国向けの輸出が拡大した20年以降、毎年10万トンを超え、25年に初めて日本の漁獲量を上回った。漁獲の大半は北太平洋の公海で、サンマの群れが日本付近に来遊する前に先取りする。しかも、日本の漁船の約5倍となる1千トン規模の漁船で「稚魚も多く取られてしまう」(漁業関係者)。