櫻井よしこ氏
中国は脱兎のごとく
南シナ海を取る
青森県の有識者らで組織する「美しい日本の憲法をつくる青森県民の会」(桑原一夫代表)の講演会が29日、青森市のホテル青森で開かれた。日大法学部教授の百地章氏とジャーナリストの櫻井よしこ氏が講演し、それぞれ憲法改正の必要性と国際情勢の変化に対応した日本の在り方などについて解説。詰め掛けた約800人が熱心に耳を傾けた。
「憲法改正の実現に向けて」と題して講演した百地氏は、集団的自衛権の合憲性に言及。「同盟国への攻撃を自国への攻撃とみなして反撃することによって相手ににらみを効かせ、平和を守るための自衛権。戦争法案というのはナンセンス」と切り捨てた。憲法改正の必要性に関しては、「憲法9条1項の平和主義を堅持し、2項を改正して自衛隊を軍隊と位置付け、栄誉を与える。平和を守るために軍隊を持つことは世界の常識」と結論付けた。
櫻井氏は「蘇れ、日本!日本の安全と憲法」と題して講演した。南シナ海での中国の動きに言及し、「米国のイージス駆逐艦が見張っている間はいいが、気を緩めたらどうなるか。脱兎のごとく南シナ海を取ると思う」と指摘。中国の狙いを「日米にくさびを打つための1つが歴史問題。中国は未来永劫、歴史カードを突きつけるだろう」と解説した。中国の脅威に対抗し、誇りある国づくりのために、「国家を守る気概と責任を持ち、まともな国に戻すためにも憲法改正する必要がある」と訴えた。
民主・岡田氏VS櫻井よしこ氏
集団的自衛権に関する
応酬がかみ合わぬ理由は?
民主党の岡田克也代表は集団的自衛権の行使が必要との認識なのかどうか-。ジャーナリストの櫻井よしこ氏がNHK番組で「かつて必要と言った」と発言したことに民主党が抗議の質問状を送り、双方で2往復する論争となった。応酬はかみ合わないまま収束したが、元はといえば集団的自衛権に対する民主党の分かりにくい対応が論争をややこしくしたといえそうだ。(酒井充)
きっかけは9月27日のNHK番組での櫻井氏の発言だった。櫻井氏は、岡田氏が民主党政権の外相時に「集団的自衛権は必要だ」と言っていたと指摘。6月17日の党首討論で「集団的自衛権は要らない」と明言したことを挙げ、「180度変わった」と批判した。
これに対し民主党は9月28日、近藤洋介役員室長名で、櫻井氏の発言は事実無根だとして「国民に重大な誤解を与える」と抗議する質問状を送った。
櫻井氏は回答期限に指定された同月30日に回答を送付。「外相時の発言」は「思い違い」だったと訂正しつつ、岡田氏が党幹事長時代の平成15年、読売新聞で「今の憲法は、すべての集団的自衛権の行使を認めていないとは言い切っておらず」と発言したと紹介した。また、岡田氏の前回の代表時の17年には月刊誌「中央公論」で「仮に集団的自衛権を憲法なり法律なりで認めるにしても、きちんとした制限を明示したほうがいい」と発言していたことなどを根拠に「明らかに集団的自衛権の必要性を認めている」と強調した。大意として「容認していた」というわけだ。
櫻井氏の回答に対し、民主党は再質問状で、櫻井氏が紹介した記事で岡田氏は「『集団的自衛権は必要』とは一言も述べていない」と反論。岡田氏が今年4月の記者会見で、集団的自衛権の行使に関し「未来を否定する考え方はとらない」と述べたとし、「180度変わった」との批判は誤りだとした。
櫻井氏は今月2日、「先の回答文で説明が尽くされている」との回答を送付。岡田氏は8日、「われわれの言い分と櫻井氏の答えを見比べれば中身は明らかだ。これ以上言う必要はない」と収束を宣言した。
「集団的自衛権が必要と明言したか、していないか」のレベルの論争となったが、「今は認めないが将来は分からない」という民主党のあいまいな見解の問題点は以前から指摘されていた。
民主党は4月に「行使一般は認めない」との見解をまとめた。同時に「安倍政権が進める集団的自衛権の行使は認めない」とも明記。安全保障関連法案の国会論戦では、行使容認の新3要件が憲法違反だとの立場を重視し、共産党などとともに「戦争法案廃止」を訴える戦略をとった。
一方、党内では前原誠司元外相や長島昭久元防衛副大臣らが行使容認論を唱えている。こうした判然としない状況は、民主党の安全保障政策への理解が深まらない原因ともなっている。
民主党が、櫻井よしこ氏に抗議の質問状 「岡田氏の集団的自衛権」発言は「誤解与える…」
民主党は28日、ジャーナリストの櫻井よしこ氏が27日のNHK番組で行った岡田克也代表らに関する発言に事実誤認があったとして、撤回と謝罪を求める近藤洋介役員室長名の質問状を送った。それによると、櫻井氏は岡田氏が外相時に「集団的自衛権は必要」と述べ、「百八十度変わった」などと言及した。同党は外相としての発言を否定し、「国民に重大な誤解を与える」などとしている。