「強盗に襲われたスガさんは助けられない」の真意は…首相の「たとえ話」 自衛隊の「助け」必要な国を代弁
一緒にいたアソウさんは助けるが、自宅を強盗に襲われたスガさんは助けられない-。安倍晋三首相は7日に出演した自民党のインターネット番組で、集団的自衛権の行使容認をこうした例え話で説明した。
首相は「友達のアソウさんと一緒に帰り、3人ぐらい不良が出てきて、いきなりアソウさんに殴りかかった。私もアソウさんを守る。今度の法制でできることだ」と解説。
一方、強盗に入られたスガさんのケースでは「家まで行って助けることはできない」と指摘した。首相自身(=日本)に危機が迫っていないため、集団的自衛権の発動要件である存立危機事態には該当しないという論理だ。
アソウさんは麻生太郎副総理兼財務相、スガさんは菅義偉(すが・よしひで)官房長官をそれぞれ指すようだ。菅氏は8日の記者会見で、例え話で首相に助けられなかったことに対し「私は見捨てられてしまった…」と冗談めかした。
しかし、菅氏の発言は、日本の自衛隊の「助け」を必要としている国を代弁しているようにも聞こえる。
安倍政権が昨年7月に閣議決定した集団的自衛権行使に関する憲法解釈見直しは、極めて限定的な容認だ。日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由が根底から覆される明白な危険がある場合、つまりその目的を「自国防衛」に限っている。
そのため、国際社会で日本の助けを必要としている国があったとしても、日本の存立が脅かされていないのであれば、集団的自衛権の行使は不可能だ。
憲法にある「国際社会において、名誉ある地位を占めたい」ならば、日本は手を差し伸べる側に立たなければならないはずだ。菅氏は、日本がいつまでも「見捨てる」国であり続けることが許されるのかという疑問を投げかけているのではないか。
(峯匡孝)