世界もおどろく日本の基準値
2000ベクレルにだまされるな
次の図を見たことがあるだろうか(図をクリックすると拡大)。
これは、「世界もおどろく日本の基準値2000ベクレル」という文書の一部だ。この毒々しい絵と数値を見た人は、
「えっ?日本の基準値ってこんなに高いの?」
「基準値以下でも危険なんだな」
と思ってしまうだろう。では、次の表を見て欲しい(図をクリックすると拡大。元の文書はこちら)。
こちらを見ると、
「あれっ?日本の基準値って厳しいほうなのでは?」
となる。そう、日本の基準値はEUと同じなのだ。ヨウ素に関しては他の国より高いものがあるが、今問題になっているセシウムに関しては、外国よりも比較的厳しい。テレビでよく
「日本の基準値は厳しいほうです」
と言っている理由がこれだ。この文書の表現を借りれば、
「世界はそれほど驚いていない」
と言えそうだ(※1)。では、どうしてこういう食い違いが生じるのか。
それは、最初に挙げた図が、そのイラストからもわかるように、見た人を不安にさせるために書かれていると思われるからだ。
そもそも、基準値は国によって違うので、日本より高いところもあれば低いところもある。日本より低い数値だけを選んで資料を作れば、こういう資料はいくらでも作れてしまうのだ。日本よりも基準が緩い国の数値がいっさい出てこないのがその証拠だ。この資料だけを見た人は、日本の基準値が世界中でもっとも緩いと思ってしまうだろう。
詳しく吟味すると、日本の数値を高く見せるために、いろいろなトリックが仕込まれているのがわかる。
たとえば、ベラルーシの飲み物の基準が10ベクレルになっているが、これは水道水の話で、牛乳の基準値は100ベクレルだ。つまり、牛乳と水道水を「飲み物」としてひとくくりにし、高いほうの数値を出さずに低いほうの数値だけが書かれている。
また、ベラルーシの食べ物(子供)を37ベクレルとしているが、これはベビーフードの基準だ。ベビーフードも食べ物には違いないと言われれば、まったくの嘘とも言えないが、あえてベビーフードとせずに「子供」と書くあたり、あまりにも恣意的だ。
さらに、WHOの水の基準を10ベクレルとしているが、WHOでは、「これらは、環境中に放射性核種が放出されているような、緊急時で汚染を受けている水供給に適用されるものではない。」としていて、原発事故のときに適用するものではない数値だ。(※2)
WHOの文書では、原発事故時にはIAEAの基準を使うことと書かれているので、そちらを見るとセシウム137の基準は2000ベクレル/Kgと、日本の暫定基準の10倍だ。
また、各国の平常時の基準値と緊急時の日本の暫定基準を比較している点もフェアではない。チェルノブイリ原発事故直後のベラルーシの基準は今の日本の暫定基準より高かったのだ(※3)。
最初に挙げた図は、「放射能について正しく学ぼう」というサイトのものだが、公正性に欠けており、サイトのタイトルと内容が大きくかけ離れていると言わざるを得ない。
もちろん、現在の暫定基準値以下なら絶対に安全だというわけではない。ガンのリスクにはしきい値がないという立場に立てば、わずかであってもリスクが高まるのは確かだろう。だからと言って、偏った数値だけを羅列して人を不安にさせることが正しいとは思えない。
平常時に冷静に考えれば、日本が世界より何百倍も何千倍も基準値がゆるいなどありえないとすぐわかるのだが、今人々の心は不安であふれている。不安な人はますます不安になる情報を信じてしまう傾向があるようだ。
※1
実際には、日本が基準値を低く設定してしまったことで、これまで輸出できていたものが輸出できなくなってしまったという例もある。詳しくは「川勝知事“怒りの”コメント 静岡」に書いてあるが、つまり、EUが、「本来うちは日本より基準がゆるいけど、日本がそんなに基準を厳しくするなら、日本産のものには日本の厳しい基準を適用しちゃうよ」ということだ。
※2
ちなみに、中部大学の武田邦彦教授は WHO の水の基準値を 1 ベクレル/リットルとしているが、これはスクリーニングレベルの話で、本当はガイダンスレベルと比べるのが正しい。武田氏にこのような初歩的な知識がないとは考えにくい(?)ため、理解に苦しむところである。一般人にわかりにくい嘘を混ぜながら、自説に都合がいい数字を挙げていると言われても仕方がないのではないだろうか。上記文書でも最初は WHO の水の基準を 1 ベクレルとしており、その後修正された。上記文書と武田氏のブログで挙げている例が似ていることから、どちらかが他方を参考にしたのかもしれない。
※3
日本よりも基準値が厳しいとして引き合いに出されているベラルーシだが、チェルノブイリ原発事故直後の基準は、飲料水が370ベクレル、牛肉は3700ベクレルと、日本よりかなり高かったらしい。ベラルーシの汚染限度の変遷は、「食品の暫定基準に対する疑念と不安が絶えない事情」に詳しい。日本はまだ「緊急時」なので現在は「暫定基準」だが、将来的には基準値が下がっていくことが期待される。
2011/9/6 若干加筆し表現を変更
注) 代表的な放射線の単位 |
人体にあたった影響量 | mSv(ミリシーベルト) 1mSv=1000μSv(マイクロシーベルト) |
物質から出る放射線の大きさ (放射能) | Bq(ベクレル) |
*シーベルトとベクレルの関係は、例えると部屋の電球の光の強さ(ワット数)がベクレル、部屋の明るさがシーベルトと考えると判りやすいでしょう。 |
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放射線の単位の量的感覚の難しさを通貨に例えて説明すると・・・
海水中などの自然放射線以下の場所で生活したらどのようになるのだろうか。自然放射線を遮蔽した生物実験の場合に生物の増殖活性が低下すると言う報告がある。人類はこれまで生活してきた環境が一番よく、環境が変わることはよくない。そこで、自然放射線より低い場所で生活するようになれば、人体によくない影響を与えるかも知れない。そこで、0.1ミリシーベルト未満の線量を注目レベルとした。
自然界には,地球の外からふりそそいでくる宇宙線、大地からのガンマ線、大気中のラドン、食物に含まれている放射性物質からの放射線などの自然放射線がある。人類は類人猿からわかれた数百万年前よりこのような自然放射線の中で暮らしながら進化してきた。放射線の量(線量)は地域的にかなりの差がある。年間線量は世界の平均では2.4ミリシーベルト、わが国では1.5ミリシーベルト程度である。ブラジルのガラバリ海岸の1部で大地からのガンマ線だけで175ミリシーベルト、市街地でも8~15ミリシーベルト、インドのケララ地域では平均3.8ミリシーベルトのところもある。また、1ミリシーベルト以下のところもある。最近の研究データによれば100ミリシーベル以下の線量で有れば健康に良いという研究報告もある。したがって0.1~30ミリシーベルトの範囲は通常生活の範囲内であるので健康レベルとした。
科学技術が生活の中に溶け込むようになり、自然放射線以外に人工的な放射線も受けるようになった。その代表的なものは医療によるものである。胃のエックス線集団検診では0.6ミリシーベルト、胸のエックス線検診では0.05ミリシーベルト、エックス線CTによる検査では10ミリシーベルトの放射線を局部に受ける。これらの値は1回に受ける線量で、検診及び検査の回数を増せば線量は増える。このような医療による放射線は自然放射線に加算されて受ける事になる。1回に500ミリシーベルト以下の放射線を受けても、ほとんど臨床的症状は起こらない。しかし、自然放射線の最高値に近い30ミリシーベルトを超える場合には、リスクは高まるかもしれなが、30~500ミリシーベルトの範囲を注意レベルとした。
500ミリシーベルト以上の線量では急性か慢性かによって異なるが、いろいろな種類の臨床的症状があらわれる。これは個人にとって受け入れる事が出来ない線量であるので、危険レベルとした。JCO事故で16,000~20,.000ミリシーベルトを受けたO氏及び6,000~10,000ミリシーベルトを受けたS氏は死亡したが,1,000~4,500ミリシーベルトを受けたY氏は助かった。5,000ミリシーベルト以上の放射線を受けると死亡する危険が急増する。放射線はたくさん浴びると危険であるが、自然放射線の程度ならば心配はいらない。
レ ベ ル | 年間線量(mSv) | 人体に対する影響 |
危険レベル | 500以上 | 臨床的症状があらわれる |
健康レベル | 0.1~30 | 健康に良いと言われている。 |
注意レベル | 30~500 | 悪い影響があらわれる可能性がある。 |
注目レベル | 0.1未満 | よくない影響があるかもしれない。 |
*放射線の安全量の具体量の提言として、安心科学アカデミー(現:安全安心科学アカデミー)から「放射線のレベルと危険度」として設立時の2003年に上記の内容で提言いたしました。
いっぽう、国際的にも著名な科学者団体・放射線専門研究組織からの放射線の安全量の提言は2004年、フランス科学アカデミーからの「年間200ミリシーベルト未満は実質的に無害」(実際的しきい値の存在)の提言。2005年アメリカ保健物理学会(放射線防護学の研究団体)より「年50ミリシーベルト未満は無害」の提言がなされております。
ベクレル。シーベルト。
昨年3月の原発事故からとてもよく耳にする言葉になったが、皆さんはどのくらいこの言葉の意味や、数字の大きさを理解されているだろうか?
放射能は目に見えないので、弱いのに必要以上に怖がったり、逆に危険なのに全く気づかなかったりする。しっかり数字で危険の度合いを知ることが大事だ。その危険の度合いを表す単位が、放射線の場合シーベルトで、放射能の場合ベクレルだ。
そもそも、放射線と放射能の区別はどうだろう。放射線は、放射性元素の原子核の崩壊に伴い発生する電磁波もしくは粒子の流れであり、光に似た一種のエネルギーと考えると理解しやすい。これを浴びると人間の細胞に影響がある。これを被曝という。DNAが破壊され、細胞分裂の際に癌が発生する確率が増えるのだ。放射能はこの放射線を出す物質(放射性物質)の能力をいう。
放射能の量を表す単位:ベクレル(Bq)は、1秒間に放射性元素が崩壊する数と定義されていて、たとえば、現在国が示す一般食品の安全基準は 100Bq/kgである。この場合、食品1kgあたり、放射性元素が存在しても1秒間に崩壊する元素が100個以下なら安全としているわけだ。実はこれ結構厳しい基準だ。
放射能は、原発事故とは関係なくもともと自然界に存在している。たとえば、カリウムの放射性同位元素「カリウム40」は、天然カリウムの0.0117%という割合で存在している。我々がいつも生活する地面にある一定のカリウムが存在するし、カリウムを多く含んだ食品、バナナやニンジンなどはごく微量ながら放射線を出しているわけだ。
シーベルト(Sv)は、放射性物質から出てくる放射線の量を表す。日常生活でも放射線を浴びてしまう機会は思ったよりもある。日常生活における放射線の被曝量をわかりやすく示した図を見つけたので掲載しておく。
これによると、我々は年間で世界平均で2,400μSv(=2.4mSv)の自然放射線を浴びているとしている。また、頻繁に航空機に乗るひとは放射線被曝量が大きいことを示している。たとえばニューヨークへの1往復だけで200μSvだ。毎月ニューヨーク出張をしているビジネスマンは、普通の人の倍、被曝している計算だ。年間の自然放射線による被曝量の平均値など、これらの数字はちょっと覚えておくと良いかもしれない。
もちろん、この被曝量が健康にどんな影響を与えるのかが気になるところだ。
こちらも、とてもわかりやすい図を見つけたのでご覧いただこう。
この図は特に高い放射線量の場合を示しているが、すぐに命に関わる影響が出るのはこのように数Sv以上の量を被曝してしまった場合だ。1999年9月のJCOの臨界事故での死傷者の例が載っている。250mSvでは白血球の一時的減少があるとされている。年間線量の世界平均値の100倍だ。
では、癌の発生確率は放射線によってどのくらい影響を受けるのだろうか。この疑問についてもとてもわかりやすい図を見つけた。
これによると、年間100mSvの被曝がある場合、癌によって死亡する人が0.5%増加するということであり、逆に放射線とは関係ない別の原因で癌になる人の割合の方が圧倒的に大きいことがわかる。ちょっと目から鱗の情報だ。
こうした数字の感覚を持っていると、今の環境が放射線量がどのくらいで、安心して住めるのかどうかがわかってくる。非常に大切な数字だ。
実はもっと怖いのは、体内に放射性物質を取り込んでしまった場合の影響だ。これを内部被曝という。これについてはまた改めて書きたい。
放射能汚染な目に見えないだけに、計測データの数字がとても大事で、計測はいわば皆さんの目の役割をしているわけだ。
このところ筆者は、本業の関係で放射能汚染とその測定関連のことに関わっている。放射性物質を取り扱える資格「第3種放射線取扱主任者」の講習を受けたり、私には今までなじみのなかったいくつもの展示会(JASIS、RADIEX、食品開発展など)に出かけて、放射線や放射能の計測ソリューションをいろいろ見てきた。そんななかで、放射能汚染に対し、さまざまな努力があちこちで行われていることを知った。放射能汚染に対する知識の大切さを改めて感じている。
mSv(ミリシーベルト)
1mSv=1000μSv(マイクロシーベルト
>>千葉県流山市の住民は、見殺し状態のようです
http://blog.goo.ne.jp/jpnx05/e/a04a6cc55f4a82d37904749400102c15
千葉県流山市のごみ焼却灰30トン(2万8100Bq/kg)、
なんと8億4千3百万ベクレルが、秋田県へ
30t×28100ベクレル
=843,000,000ベクレル
この数式正しいのでしょうか?
数字のトリックに騙されるな!